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就活
コラム
製法開発の現場で求められる経験
金剛化学株式会社[修士卒/研究職]
業種[医薬品/ファインケミカル]
「先輩インタビュー」第十六回では、70年以上の歴史を持ち、新薬メーカーとの共同開発や、ジェネリック医薬品原薬の開発・製造等の分野にも積極的にチャレンジしながら、数々の医薬品原薬等を国内外の製薬メーカーに供給している金剛化学株式会社。今回はその研究部署で活躍されている3人の若手研究者の皆さんにお話を伺ってきました。




合成ルート開発の現場の難しさとやりがい・・・
本日は宜しくお願い致します。今回は今までと少し形を変えて、3名の方にお話をお伺いさせていただく形で進めさせていただきたいと思います。早速ですが、皆さんは入社何年目になられますか? 

KW 私たちは今度の4月から3年目になります。

所属されている部署はどちらになりますか? 

KN  3名とも研究部の所属になります。

なるほど。皆さん同じグループで研究をされているという事でしょうか? 

Y グループはそれぞれ別になります。私は、製法開発のグループ3に所属していて、KWが同じ製法開発のグループ2、そしてKNがグループ1になります。

なるほど。それぞれのグループの違いというものはあるのですか? 

KW 私たちの所属している製法開発では、基本的にジェネリック薬品の合成ルートの研究や条件検討を行っていますが、グループごとに取り扱う製品やテーマを分けている形になります。

そのように関わってこられたお仕事の中で、やりがいと同時にこう言ったところが難しかったなと感じる部分があったかと思いますが、いかがでしょうか? 

Y 今は反応条件を探す段階ですが、問題になっている部分が一つ一つ改善されていき、徐々に上手くいくフローになっていく過程にやりがいを感じますね。

逆に難しさを感じる部分はどのあたりですか? 

Y 大学の研究室の頃と目的が違ってきているところでしょうか。

目的の違いですか? 

Y はい。大学の研究室の頃は、ある程度合成が出来ればよいというところがあるのですが、企業の研究現場では、安全性やコスト意識、特許に関する意識などについても厳しく注意を払わなければいけない部分が難しさを感じました。

学生時代は、あまり安全性という点について意識はされていなかったのですか? 

Y そう思います。火を出さないように、という程度の意識だったと思います。

KN 取り扱う量なども全く違うので、あまり意識はなかったと思います。

Y 先生から安全についての指導はありましたが、KNさんが言ったように取り扱う量が少ないので、静電気などについてあまり意識をしたりすることはなかったと思います。ですが、企業の現場ではちょっとしたことが大事故に繋がるので、そうしたものへの注意が大事なのだという事を学びました。

KNさんは、やりがいやむずかしさについてどう思われていますか? 

KN やりがいとしては、Yさんが言われたような、自分がやっていた実験によって、徐々に合成ルートが出来上がっていく部分に強く感じますね。難しさの部分については、学生時代はモノをある程度の収率で作れればよいという考え方でしたが、今私たちが携わっている「薬を作る」という仕事は、人の体に入るものを作るわけですので、不純物の管理ですとか、一つ一つの実験に対する丁寧さについて格段に高い水準が求められる部分に難しさを感じましたね。

なるほど。KWさんはいかがですか? 

KW やりがいの部分としては、目標の品質を保てる物が一定のコストの中に収まる形で合成することが出来て、そうした積み重ねの中で上手く合成プロセスを作ることが出来た時に、一番やりがいを感じますね。

やはり重要なポイントとしては、安全性とコスト管理という部分が共通してくるのですね。 

KW あと医薬品の取り扱い上では、品質という部分も重要だなと感じていますね。

品質ですか。 

KW はい。合成時にこういう不純物が出来るから、それぞれの不純物が体内に入った時の挙動がどうなるかや、扱う溶媒や試薬などが働きなどについても一つ一つ考えていかないと、最終的な薬となった時に患者様に安心して服用していただくことが出来ないので、品質の管理意識もとても重要なポイントになると思います。





就職活動の時に目指していたこと・・・
就職活動の時に目指していたこと・・・
少し話は変わりますが、皆さんが学生時代に取り組まれていた研究内容はどのようなものか、お伺いできますか? 

KW 私は、有機金属錯体という有機化合物と金属を組み合わせた物質についての研究をしていました。有機物として色素を使い、そこに金属を取り込ませることで光を使った触媒反応の開発や物性研究を進めていました。

KN 私は、カロテノイド系の天然物の全合成を行っていました。

Y 私の場合は、有機合成の研究室で反応剤の研究を行っていました。

そうしますと、皆さん学生時代は今取り組まれている業務と分野的に違った内容の研究をされていたのですね。 

KW はい。分野としてはだいぶ違いますね。

そうしますと、就職活動をされていた頃は、どういったことを軸に企業探しなどをされていましたか? 

KW 私の場合はまず、有機合成系の企業を中心に就職活動をしていました。初めは半導体や機能性分子を扱う企業から見ていき、最終的に医薬品関係の企業を志望するようになっていきました。

なるほど。その中から金剛化学に入社しようと思ったきっかけなどはどのようなことがありますか? 

KW きっかけになった事としては、今の研究部の部長とお話をする機会があり、その時に研究部の取り組みについて詳しく伺うことが出まして、研究環境に魅力を感じて入社を決めました。

なるほど。ありがとうございます。
KNさんは如何でしょうか?先ほど、学生時代は天然物を取り扱われていたという事で、やはり今の業務とは分野的に距離があるように感じますが。 


KN 私は当初より医薬品関係で合成の仕事がしたいと考えていましたので、そうした合成研究の職の募集がある企業の説明会などに参加していきました。

そうした方向性で企業探しを進めていかれた際に、KMさんが重視されたポイントにはどういったものがありますか? 

KN 重視したポイントとしては、KWさんとも重なりますが、居心地の良さや、働きやすさといった点をよく見ていたと思います。

なるほど。今お二人とも共通したポイントとして「居心地の良さ」というものを挙げられましたが、どういった部分でその「居心地の良さ」というものを感じるものですか? 

KW 疑問に感じたことや知りたいと感じたことについて、周囲の先輩や上司が素直にレスポンスを返してもらえる部分だと思います。
KN 私も同じように思いますね。

なるほど、チームとしての輪といいますか、グループ内でのコミュニケーションがとりやすい環境なんですね。 

KN 所属するグループ内だけでなく、グループ間でも意見交換がすぐにできる環境なので、コミュニケーションが活発にできるところに居心地の良さを感じますね。

Yさんは、先ほどお伺いしたお話では有機合成系の研究室に所属されていたとのことですが、やはり軸としては有機合成を中心に見ていた感じですか? 

Y 私は薬学系の学部でしたので、当初は製薬メーカーを中心に、新薬を合成していたり製剤に特化していた企業などを目指していました。

初めは製薬メーカーを志望されていたんですか。 

Y はい。けれども、学生時代に私がやってきたことは有機合成なので、後半になるに従い薬品原薬を取り扱う企業に入社したいなと考えるようになって、少し方向転換をしていきました。

製薬メーカーでの研究開発の仕事ではなく、原薬メーカーでの研究開発の仕事をしたいと思ったポイントはどういったところですか? 

Y やはり、学生時代に反応開発が楽しいなと感じていたので、新しいものを作り出すことよりもプロセスを作っていく医薬品原薬の開発が自分には合っていると感じて、目指す方向性を変えました。





就職活動時に思い描いていた現場と実際の現場・・・
就職活動時に、説明会や見学会などで業務についての説明を見聞きする機会はあったかと思いますが、そのころ思い描いていた現場と、実際に入社して見た現場とにギャップなどはありましたか? 

KW 実験をする過程については、想像していた通りだったなと感じています。逆に想像と異なったポイントとしては、実験室と工場ではスケールが異なるので反応の仕方も当然異なってくるんですね。学生時代は工場規模の実験の経験はありませんでしたので、実験室規模から工場規模へ大きくしていくことについてまったくイメージがありませんでした。

その違いはとても大きいですね。 KNさんはいかがですか?

KN 入ってみて気づいたこととしては、やることが思っていたよりも多いなという点がありますね。就職活動時は、デスクワークと実験の繰り返しの日々なのかなと想像していたのですが、実際には工場へ足を運んだりなど実験室以外での仕事も多くあるところは驚きでした。

外との繋がりが想像よりも多いんですね。 

KN はい。他分野の人との接点は、私自身の業務ではまだそれほど多くはないのですが、先輩の仕事を見ているとそうした事がよくみられるので、今後増えていくだろうと思っています。

なるほど。Yさんはいかがですか? 

Y 二人と同じく、実験室内での業務についてはある程度想定通りでしたが、外との繋がりの多さが予想と違っている部分でした。

皆さん、実験室内での業務の形については想定通りだったとのお話でしたが、研究自体の取り組み方や目指す方向性などに、学生時代との違いなどはありますか? 

Y 基本的にはトライ&エラーでやっていく部分は変わらないと思いますが、企業の中では効率を求められるようになったかなと思います。

効率ですか? 

Y 大学にいた頃は朝から夜まで自分のペースで実験をしていましたが、企業の仕事としての実験では明確な期限というものがあるので、計画的に実験をしていかなければいけないところは、取り組み方として大きく違うなと感じますね。

KNさんはいかがですか? 

KN 先ほどお話したように実験室以外の業務もあるために限られた時間の中で実験をしなければなりませんから、効率的に実験をしなければいけないというところは、違いとして大きいですね。長期的に見ても、多様なデータを取らなければいけませんので、一つ一つの実験についても学生時代に比べてスピーディさが求められますね。

なるほど、効率的に取り組むことが求められるんですね。しかし、そうした効率的な仕事というのは、言葉でいうのは簡単ですが、実際に行うのは大変ですよね。その辺りについて先輩や同僚から指導やアドバイスなどはあるのですか? 

KW 先輩から「こうしたら上手くいくのでは?」というアドバイスを何通りかもらうことはよくありますね。あと、グループは違いますがKNさんと私は席が隣同士なので、仕事中も良く話し合いはしてます。

KN 「この反応、どうしよう?」みたいな話はよくしてます。

そうなんですか。

KW それ以外の先輩などとも、雑談の流れで「この反応、いくらやってもうまくいかないんですよ」という感じで愚痴っぽく相談して、次第に真面目に「こうしたらどうだ?」という意見交換を深めていく感じですね。

―REDなるほど、とても相談しやすい環境なんですね。 

KN そうですね。一人で問題を抱え込まないような雰囲気ですね。





今振り返って見えてくる学生時代の経験・・・
今振り返って見えてくる学生時代の経験・・・
少し視点を変えた話として、学生時代のこんな経験が魔の業務に活きているなと感じる事などはありますか? 

Y 学生時代に取り組んでいた研究内容は全く新しいテーマでしたので、先が見えない中で実験をしていたんです。そのため、「研究で失敗が続いてもめげない」ということが自然と身について、それが今自分をとても支えているなと感じます。

なるほど。トライ&エラーを繰り返すことについて抵抗力がついた、という感じでしょうか。 

Y はい。私の経験としては入社して2,3か月の頃にスクリーニングで300個以上トライ&エラーを繰り返す実験をしたことはありますが、粘り強く取り組めたのにはそうした学生時代の経験が支えにあったからだなと感じていますね。

その様に「めげない」ためには、意識の在り方としてどういった捉え方をしているのでしょうか? 

Y そうですね。「失敗した」と考えるのではなく「この方法では上手くいかないという事が分かった」と捉えるようにすることが大事かと思います。

なるほど。失敗と否定的に捉えるのではなく、「新しい事実が分かった」と前向きな結果として捉えるんですね。 

KN まさに僕が今話そうと思っていたことを先に言われてしまいましたね(笑)

KNさんも同じ思いでしたか。 

KN そうですね。合成の中でどうしても上手くいかない事があって立ち止まってしまった時、学生時代に「これは失敗ではなく、上手くいかないという事実が分かったんだ」と前向きにとらえられるようになったことで、「次にどうしたらよいか」と常に考えられるようになったと強く感じます。

ちなみに逆の視点として、入社して見えてきた事から振り返って、学生時代にこういう経験をしておくべきだと思えることはありますか? 

KN 学生時代の研究テーマがどのようなものであっても何かしらは活かせると思うので、自分が今何のためにその実験をしているのかという事をしっかりと理解した上でそのテーマをやり切るという事が大事かなと思います。

学生の方の中には、自分の研究テーマは先生から与えられたものだったので、それがどう活きるものなのかということがよく分からないという人もいるみたいです。 

Y 大学の研究室時代の研究テーマは正直企業での研究と関係のないことをやっているので、研究のテーマがどう活かされるかという事より、考え方や基礎となる科学的知識を用いてどの様に考えていくのかという考察のプロセスを学ぶのが大学院での大切な要素だと思います。ですので、今やっている研究を通して基礎的な知識と考える力を身に着けていくことが重要だと思います。

    
なるほど。そうした観点で見た場合、どういった学生の方だと自分の現場に合うなと思いますか? 

KN 今何をしているかとかホウレンソウ的な一般的なコミュニケーションをしっかりととれる方なら問題ないと思います。

ちなみに学生時代の研究室で、指導教員や先輩の方とのホウレンソウ的な部分でのコミュニケーションの在り方というのは、今の仕事の中での先輩や上司とのコミュニケーションとは、質的な違いはありますか? 

KN その点については私の場合は、とてもよく似ていたなと思います。

そうしますと、大学の研究室内でのホウレンソウの延長線上のイメージでコミュニケーションをしっかりと取れれば、企業に入社してからもやっていけるという感じでしょうか。 

KN そう思います。

KW それと合わせて、コミュニケーション能力というものも含んでいるかもしれませんが、自分がやっている研究についてしっかりと説明できる人というのも大事かな、と思いますね。

自分の研究について説明できる人、ですか。 

KW 自分自身が取り組んでいることについて、相手に伝わるように説明できないと、業務の中で自分が今何をしているのかを適切に報告・相談することが出来ないので、そういうことをしっかりと出来る人かなと思います。

人に説明するには、まず自分が何より理解できていなければなりませんよね。 

KW そうですね。自分の中で理解を深めて、この先にどのように進めればよいかと自分なりの意見を形にするところまで考えてディスカッション出来る人ならば、入社後に活きると思います。

ありがとうございます。それでは最後になりますが、これから就職活動をする学生の方に向けて一言アドバイスを頂けましたら、お願い致します。 

KW 選考の場でしっかりと自分の研究をアピールできる準備をすることが大切だと思うので、まずはその点をしっかりと頑張ってください。

KN 大学という場で自由に研究を出来るのは今だけなので、今の研究を後悔のないところまでやり切ってください。

Y 企業の事業内容はやはりそれぞれ違います。なので、どういった企業を志望するかというところで、自分が何をやりたいのかという事をまずしっかりと絞っていって、それが出来る企業を丁寧に探していくようにすると、入社後に納得のいく仕事ができると思いますので、自分が何をやりたいのか、その点をしっかりと見つめて就職活動を頑張ってください。

なるほど。
本日は貴重なお話を聞かせて頂きまして、ありがとうございました。




【文責:(株)スプラウト 分須弘二】