就活
コラム
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触媒開発の現場から見えたもの
エヌ・イー ケムキャット株式会社[博士修了/研究開発]
業種[総合化学/石油化学/医薬品/農薬/ファインケミカル/無機化学/資源化学/電子材料/エネルギー/環境/その他機能性化学品(有機・無機)]
業種[総合化学/石油化学/医薬品/農薬/ファインケミカル/無機化学/資源化学/電子材料/エネルギー/環境/その他機能性化学品(有機・無機)]
第七回では、国内最大級の総合触媒メーカーとして、自動車触媒や化学触媒、燃料電池触媒など多様な分野で活用される触媒開発をされているエヌ・イー ケムキャット株式会社を訪問してきました。
入社3年目。自動車触媒の研究開発の現場でご活躍されているSさんにお話を伺ってきました。
入社3年目。自動車触媒の研究開発の現場でご活躍されているSさんにお話を伺ってきました。
お客様の要望に応え続けることの難しさ
―こんにちは。さっそくですが、Sさんが所属されている部署でのお仕事について、お聞かせ下さい。
S 現在は自動車触媒開発部に所属しています。私たちの主なお客様は国内のカーメーカー様になります。新しい車が開発される時に、それに搭載する触媒を開発しています。
―車に搭載する触媒の開発をされているのですね。
S はい。車のエンジンで燃料を燃焼させた時、有害な排気ガスが出てしまいますが、それを無害なガスに浄化するパーツが、私たちが開発する自動車用排ガス浄化触媒になります。
―そうした触媒開発というのは、お客様から「こういうものを開発してほしい」という依頼に合わせて作るイメージですか?
S そうですね。お客様がどこの国や地域向けに車を開発したいかによって、将来的に入る排気ガスの規制は異なりますので、それらと照らし合わせながら十分に条件を満たすレベルの触媒を開発して納めていくというのが私たちの仕事になります。
―そうした製品開発の中で、仕事の難しさはどういったところに感じられますか?
S お客様の要求に如何に応えていくか、というところが難しいポイントだなと感じますね。
―お客様の要求、ですか。
S 実際に今世に出ている自動車の排ガス浄化触媒は、作り立ての状態で使うとほぼ有害なガスを無害に浄化する能力を持っていますが、お客様の要求に応えるためには例えば数十万km走り込んだ時でも十分な性能を保証する必要があります。その性能を出せる触媒が開発できた場合でも、触媒には高価な貴金属を用いるのですが、今度はその貴金属の量を下げてコストを低く抑えた形で、同質かそれ以上の性能の触媒を開発できないか、と求められてきます。そうしたお客様の要求に如何に応え続けていけるかというところが、難しい部分だと感じています。
―お客様の要求レベルが高くなっていくことに応えていく、というのは大変ですね。
S そうですね。私たちの仕事の場合、一概に「ここまでいったら終わり」というものがあるわけではなく、やるべきことはいくらでもあると思っています。
―逆に、そうした仕事の中で感じるやりがいなどは、どのようなところに感じますか?
S 社内に技術の蓄積はたくさんあるのですが、それでもまだ、発展させていかなければならない分野というのは色々あります。そうした中で、今までと少し視点を変えて自分が考え出した一手に効果があった時、まだ自分だから開拓できる技術の領域というのは存在しているんだと感じた際や、お客様にもそれを評価していただけたというのを感じた時には、やりがいを感じますね。
―自分だから開拓できたと感じられることは、非常に自信にもつながりますね。
S 現在は自動車触媒開発部に所属しています。私たちの主なお客様は国内のカーメーカー様になります。新しい車が開発される時に、それに搭載する触媒を開発しています。
―車に搭載する触媒の開発をされているのですね。
S はい。車のエンジンで燃料を燃焼させた時、有害な排気ガスが出てしまいますが、それを無害なガスに浄化するパーツが、私たちが開発する自動車用排ガス浄化触媒になります。
―そうした触媒開発というのは、お客様から「こういうものを開発してほしい」という依頼に合わせて作るイメージですか?
S そうですね。お客様がどこの国や地域向けに車を開発したいかによって、将来的に入る排気ガスの規制は異なりますので、それらと照らし合わせながら十分に条件を満たすレベルの触媒を開発して納めていくというのが私たちの仕事になります。
―そうした製品開発の中で、仕事の難しさはどういったところに感じられますか?
S お客様の要求に如何に応えていくか、というところが難しいポイントだなと感じますね。
―お客様の要求、ですか。
S 実際に今世に出ている自動車の排ガス浄化触媒は、作り立ての状態で使うとほぼ有害なガスを無害に浄化する能力を持っていますが、お客様の要求に応えるためには例えば数十万km走り込んだ時でも十分な性能を保証する必要があります。その性能を出せる触媒が開発できた場合でも、触媒には高価な貴金属を用いるのですが、今度はその貴金属の量を下げてコストを低く抑えた形で、同質かそれ以上の性能の触媒を開発できないか、と求められてきます。そうしたお客様の要求に如何に応え続けていけるかというところが、難しい部分だと感じています。
―お客様の要求レベルが高くなっていくことに応えていく、というのは大変ですね。
S そうですね。私たちの仕事の場合、一概に「ここまでいったら終わり」というものがあるわけではなく、やるべきことはいくらでもあると思っています。
―逆に、そうした仕事の中で感じるやりがいなどは、どのようなところに感じますか?
S 社内に技術の蓄積はたくさんあるのですが、それでもまだ、発展させていかなければならない分野というのは色々あります。そうした中で、今までと少し視点を変えて自分が考え出した一手に効果があった時、まだ自分だから開拓できる技術の領域というのは存在しているんだと感じた際や、お客様にもそれを評価していただけたというのを感じた時には、やりがいを感じますね。
―自分だから開拓できたと感じられることは、非常に自信にもつながりますね。
学生時代と今の視点の違い
学生時代と今の視点の違い
―ちなみに学生の頃、Sさんはどのような研究をされていましたか?
S 大学4年生の時から、ずっと触媒の研究をしていました。
―学生の頃から触媒に関わっていらしたんですね。
S ただ触媒といっても、今私が関わっている自動車用の排ガス浄化触媒ではなく、主に木の皮などの木質系バイオマス由来の糖類を化学変換して、様々な化成品やバイオ燃料の中間体に変えることを可能にする触媒をテーマに研究をしていました。
―どちらかというと有機的な研究をされていたのですね。 大学院の方でもそれは変わらず?
S そうですね。
―その後、卒業に際し企業探しをされていったと思うのですが、その時どういった軸で就職活動をされましたか?
S わりと初めの頃から絞っていたところが有るのですが、博士まで触媒の研究をしてきたので何らかの形で触媒に携わる仕事につきたいと思って、触媒メーカーをまわりました。
―その就職活動をしていた頃に思い描いていたイメージと、今実際に触媒開発の現場に入って見えた事にギャップなどはありましたか?
S 研究現場の違いとしては、学生の頃はとことん突き詰めることが出来る環境でした。ある程度、学会で発表するとか卒業の研究発表があるなどのリミットはありましたが、その期間内では自分が興味を持ったことを突き詰めていくことができ、自分の力で研究能力を高めていく面白さがありました。一方で企業での研究現場は、今まで無かった技術を発見していくという部分では共通するのですが、一番優先度が高い要素は「お客様の要望」になるので、仮に「こういうことをやったら面白い触媒が出来るのではないか」という方向があったとしても、それが直近のお客様のニーズにマッチしていなかったら、研究の優先度は低くなるんですね。まずはお客様が求めている物を仕上げることが第一になる点が、大きな違いだと思います。
―なるほど、研究時の優先するポイントが異なるんですね。
S あと、スピード感というものも違ったと思います。学生の頃は興味のあることがあったらじっくり時間をかけて研究する事が出来ましたが、企業の場合は決められた納期の中で如何にお客様のニーズにマッチしたものを作っていくかという形で研究していくので、比較的ハイペースで進んでいかなければいけない点も違いとしてあると思います。
―その限られた納期の中でニーズにマッチした物を開発するというのは、とても大変だと思うのですが、そのために必要なポイントは何だと思いますか?
S 一番大事だと思うのは、スケジュール意識かなと思います。納期というゴールに向けて何をいつまでに研究していくか?という全体のスケジュール感もそうですし、開発品の試作や性能の評価を実施するにあたって、限られた設備を他の人とバッティングしないように使うタイミングを調整しつつ、どう全体のスケジュールに合わせていくかということも意識しながら研究を進めることが大事だと思います。
―そうした時間管理は、学生のころと比べるとだいぶ異なる感じですね。
S そうですね。だいぶシビアだと思います。
―そのほかに何か、学生時代との違いを感じる部分はありますか?
S そうですね。研究の進め方の部分で、学生の頃は、考えるのも物を作るのも評価するのも自分で手を動かしてやっていたのですが、今の研究現場では、考えることは勿論自分でしますが、物を作る部分や評価をする部分では別の部署に依頼をして、出てきたものを自分がまとめるというのが主な形になります。ですので、全体的に見れば時間当たりに出てくるデータというものは濃厚になるのですが、一方で、その依頼が自分の意図するものとは違ったように伝わってしまうと、極端に言うと意味の無いデータが返ってきてしまう危険性もあります。自分の言いたいことを相手にちゃんと伝える能力が大事になる点を、違いとして感じています。
―その製造や性能評価などで関わる部署の方というのは、研究領域的には別分野の方になるのでしょうか?
S そうですね。場合によっては、触媒や分析に関わってこなかった方がされることもあるので、誰が聞いても同じように理解していただける様な伝え方を意識する事が大事になるなと思います。
S 大学4年生の時から、ずっと触媒の研究をしていました。
―学生の頃から触媒に関わっていらしたんですね。
S ただ触媒といっても、今私が関わっている自動車用の排ガス浄化触媒ではなく、主に木の皮などの木質系バイオマス由来の糖類を化学変換して、様々な化成品やバイオ燃料の中間体に変えることを可能にする触媒をテーマに研究をしていました。
―どちらかというと有機的な研究をされていたのですね。 大学院の方でもそれは変わらず?
S そうですね。
―その後、卒業に際し企業探しをされていったと思うのですが、その時どういった軸で就職活動をされましたか?
S わりと初めの頃から絞っていたところが有るのですが、博士まで触媒の研究をしてきたので何らかの形で触媒に携わる仕事につきたいと思って、触媒メーカーをまわりました。
―その就職活動をしていた頃に思い描いていたイメージと、今実際に触媒開発の現場に入って見えた事にギャップなどはありましたか?
S 研究現場の違いとしては、学生の頃はとことん突き詰めることが出来る環境でした。ある程度、学会で発表するとか卒業の研究発表があるなどのリミットはありましたが、その期間内では自分が興味を持ったことを突き詰めていくことができ、自分の力で研究能力を高めていく面白さがありました。一方で企業での研究現場は、今まで無かった技術を発見していくという部分では共通するのですが、一番優先度が高い要素は「お客様の要望」になるので、仮に「こういうことをやったら面白い触媒が出来るのではないか」という方向があったとしても、それが直近のお客様のニーズにマッチしていなかったら、研究の優先度は低くなるんですね。まずはお客様が求めている物を仕上げることが第一になる点が、大きな違いだと思います。
―なるほど、研究時の優先するポイントが異なるんですね。
S あと、スピード感というものも違ったと思います。学生の頃は興味のあることがあったらじっくり時間をかけて研究する事が出来ましたが、企業の場合は決められた納期の中で如何にお客様のニーズにマッチしたものを作っていくかという形で研究していくので、比較的ハイペースで進んでいかなければいけない点も違いとしてあると思います。
―その限られた納期の中でニーズにマッチした物を開発するというのは、とても大変だと思うのですが、そのために必要なポイントは何だと思いますか?
S 一番大事だと思うのは、スケジュール意識かなと思います。納期というゴールに向けて何をいつまでに研究していくか?という全体のスケジュール感もそうですし、開発品の試作や性能の評価を実施するにあたって、限られた設備を他の人とバッティングしないように使うタイミングを調整しつつ、どう全体のスケジュールに合わせていくかということも意識しながら研究を進めることが大事だと思います。
―そうした時間管理は、学生のころと比べるとだいぶ異なる感じですね。
S そうですね。だいぶシビアだと思います。
―そのほかに何か、学生時代との違いを感じる部分はありますか?
S そうですね。研究の進め方の部分で、学生の頃は、考えるのも物を作るのも評価するのも自分で手を動かしてやっていたのですが、今の研究現場では、考えることは勿論自分でしますが、物を作る部分や評価をする部分では別の部署に依頼をして、出てきたものを自分がまとめるというのが主な形になります。ですので、全体的に見れば時間当たりに出てくるデータというものは濃厚になるのですが、一方で、その依頼が自分の意図するものとは違ったように伝わってしまうと、極端に言うと意味の無いデータが返ってきてしまう危険性もあります。自分の言いたいことを相手にちゃんと伝える能力が大事になる点を、違いとして感じています。
―その製造や性能評価などで関わる部署の方というのは、研究領域的には別分野の方になるのでしょうか?
S そうですね。場合によっては、触媒や分析に関わってこなかった方がされることもあるので、誰が聞いても同じように理解していただける様な伝え方を意識する事が大事になるなと思います。
企業の研究現場で活きている経験
―ところで逆の視点として、今の業務に活きているなと感じる学生時代の経験などはありますか?
S 研究内容としては、同じ触媒というものを扱ってきていますが、学生時代は化学触媒に近い研究をしていたのに対して、入社してからは自動車触媒の研究をしているので、そこまで直結はしていないなとは感じています。ただ、何かわからない事象が有った時に、何が分からないのかという事を整理し、それを分かるようにするには何をすればよいのかという手段を考えて、実行してフィードバックを受けて次にどうしていくかという、基本的な研究の姿勢は共通して求められるので、そうした経験は今役に立っているなと感じています。
―ちょっと視点を変えた切り口として、今自分が職場で先輩として後輩を見る場合、注視するポイントなどはどのようなところになりますか?
S 一番は、自分で動けることじゃないかなと思います。そしてそれを抱え込まずに話してくれることかなと思います。
―自分で動けることですか。
S やりたいことがあるとなった時に、それをやるためには自分で実験をしなければいけないのか、或いは別の部署の方にお願いをしなければいけないのかを判断する必要があります。目的を遂行するためにどう動かなければならないのか、それを自分で考えて動ける人というのは、やはり出来る研究の幅が広がってきますので、大切なポイントだと思います。
―なるほど。ちなみにSさんの職場はやはり複数人のチームで研究していくイメージですか?
S そうですね。多人数チームでの研究はかえってまとまりが悪いケースがありますので、案件毎に数名でチームを組むことが多いです。少数メンバーで進めるためには、メンバー各自が役割をしっかり認識し当事者意識を持つことが大事な点だと思っています。
―そういう点では確かに、自分で考えて動きつつ、必要なコミュニケーションをとれる事というのは大事になってきますね。
―最後になりますが、学生の方たちに何かアドバイスなど有りましたら伺えますでしょうか?
S 人に言われて何かを研究するのではなく、少なくとも学生時代は自分が興味を持つことを突き詰めてやっていくべきだなと思います。
―突き詰めてやっていく経験が大事なんですね。
S 根を詰めてやれというのではなく、やりたいと思う興味に基づいて研究を突き詰めていけば、そこで得た知見が強みにもなりますし、例えば脇道に逸れたとしても、メインの研究分野だけでなく別の分野にも関心を持って詳しい人というのは、色々な視点を持てるだけでなく、分野を飛んだ頭の切り替え方が素早いので、企業へ就職した後でも強く活きると思います。
―なるほど
S なので、やりたいことを突き詰めつつ、視野を広げる意識を持って頑張ってほしいと思います。
―本日は貴重なお話を聞かせて頂きまして、ありがとうございました。
T ありがとうございました。
【文責:(株)スプラウト 分須弘二】
S 研究内容としては、同じ触媒というものを扱ってきていますが、学生時代は化学触媒に近い研究をしていたのに対して、入社してからは自動車触媒の研究をしているので、そこまで直結はしていないなとは感じています。ただ、何かわからない事象が有った時に、何が分からないのかという事を整理し、それを分かるようにするには何をすればよいのかという手段を考えて、実行してフィードバックを受けて次にどうしていくかという、基本的な研究の姿勢は共通して求められるので、そうした経験は今役に立っているなと感じています。
―ちょっと視点を変えた切り口として、今自分が職場で先輩として後輩を見る場合、注視するポイントなどはどのようなところになりますか?
S 一番は、自分で動けることじゃないかなと思います。そしてそれを抱え込まずに話してくれることかなと思います。
―自分で動けることですか。
S やりたいことがあるとなった時に、それをやるためには自分で実験をしなければいけないのか、或いは別の部署の方にお願いをしなければいけないのかを判断する必要があります。目的を遂行するためにどう動かなければならないのか、それを自分で考えて動ける人というのは、やはり出来る研究の幅が広がってきますので、大切なポイントだと思います。
―なるほど。ちなみにSさんの職場はやはり複数人のチームで研究していくイメージですか?
S そうですね。多人数チームでの研究はかえってまとまりが悪いケースがありますので、案件毎に数名でチームを組むことが多いです。少数メンバーで進めるためには、メンバー各自が役割をしっかり認識し当事者意識を持つことが大事な点だと思っています。
―そういう点では確かに、自分で考えて動きつつ、必要なコミュニケーションをとれる事というのは大事になってきますね。
―最後になりますが、学生の方たちに何かアドバイスなど有りましたら伺えますでしょうか?
S 人に言われて何かを研究するのではなく、少なくとも学生時代は自分が興味を持つことを突き詰めてやっていくべきだなと思います。
―突き詰めてやっていく経験が大事なんですね。
S 根を詰めてやれというのではなく、やりたいと思う興味に基づいて研究を突き詰めていけば、そこで得た知見が強みにもなりますし、例えば脇道に逸れたとしても、メインの研究分野だけでなく別の分野にも関心を持って詳しい人というのは、色々な視点を持てるだけでなく、分野を飛んだ頭の切り替え方が素早いので、企業へ就職した後でも強く活きると思います。
―なるほど
S なので、やりたいことを突き詰めつつ、視野を広げる意識を持って頑張ってほしいと思います。
―本日は貴重なお話を聞かせて頂きまして、ありがとうございました。
T ありがとうございました。
【文責:(株)スプラウト 分須弘二】