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就活
コラム
植物の力を活かす
株式会社常磐植物化学研究所[修士/研究開発]
業種[医薬品/化粧品/ファインケミカル/食品化学/その他機能性化学品(有機・無機)]
 植物成分の抽出・分離・精製技術を核に、医薬品や化粧品、健康食品などの分野で、国内外2000社超に商品を提供している、常磐植物化学研究所。都心から約1時間の千葉県佐倉市内に、約4万平方メートルの敷地に研究所や抽出・精製工場を有し、植物に対するニーズ・要望に的確に応える活動を進めている。
 今年で入社5年目のLさんは、台湾出身。台湾大学で学部を卒業、東京大学農学研究科で修士課程を修了したバリバリの研究者。「人の役に立つ仕事、それも健康であることに役立つ仕事をしたい」と同社を選んだというLさんに、就職時の心構え、その後の意識の在り方などを伺った。



研究開発重視に魅力感じる
研究開発重視に魅力感じる
台湾の出身で、日本の企業に就職した決め手は。

L 学部時代からモノづくりに携わりたいと考えていました。それも、健康食品・サプリメントに興味がありました。大学院時代もその思いを持ち続けていました。特に、植物の成分に興味があり、NMR(核磁気共鳴装置)を使った成分分析を主に研究しました。
一般的に、市場においても従来の抗酸化などのほかにも様々な成分や製品が投入されています。それらを含め、健康食品に対する意識は、台湾よりも日本の方が高く、企業もそれに応えるために努力しています。高いレベルの環境の中で、モノづくりに携わることができればと思って、常磐植物化学研究所に就職しました。

健康食品に興味をもったきっかけは。

L 20年くらい前でしょうか。これは健康に良いから食べなさい、と苦い野菜などを薦められたりしていました。健康に良いのだからと思うものの、苦いのは苦手ですよね。健康に役立つ植物の成分を、楽に美味しく摂取するという意味では、健康食品かなと思ったからです。
―常磐植物化学研究所は、植物由来成分の供給企業としては、日本ではトップシェアを持つ企業ですが、一般的に知名度は高くありません。
 一般の消費者の方にはそれほど知名度があるわけではないと思いますが、(植物化学)研究の分野では知られた存在です。特に、関連する学会や展示会などでは発表に名前が出てきたり、出展していたりで、学生時代から頻繁に社名を耳にしたり、その活動の在り方などを知る機会が多くありました。また、学術機関との共同研究も盛んで、その成果も広く発表されていることなどもあって、単なるメーカーであるだけでなく研究開発に力を入れている企業というイメージを持つことができ、就職したわけです。

日々の仕事のスケジュールは。

L 現在、研究開発部に所属し、午前中は実験や抽出などの作業をこなし、午後からは分析データの解析や報告書の作成などのデスクワーク、というのが基本です。自分なりに、植物からの物質の抽出や分析などの手作業を行い、その結果をまとめたり、ディスカッションしたりして素材開発に打ち込めるというのは研究開発に携わる者としての醍醐味であると実感しています。そんな自分の在り方や内容を考えてみると、ここでの仕事に対する満足度は80%以上と評価できます。

学生時代と現在で、研究に対するスタンスの違いはありますか。

L 大きく違っています。学生時代から、NMRを用いた分析手法を得意にしていましたが、研究そのものは自分の興味が中心にありました。就職してからは、研究開発ということでは、作業自体に大きな変化はないものの、仕事に生かせるものは何か、ということが中心になっています。学生の時は、新しいものの発見を第一に実験や論文の作成に取り組んでいました。それはそれで、科学に貢献するという意味で大切なことであると思います。
企業では、社会貢献の意味も含めて、マーケットの需要や生産コストにどのように対応していくのかが主要なテーマになります。単に新しいものを創製したというだけでなく、それが市場のニーズに合致しているのか、受け入れられるのか。それらのニーズを満たすようなものを創ることが第一義になります。加えて、コストの抑制も大きな課題です。学生時代は、高価な原料や試薬を使ったりしても結果が得られればそれで成り立つわけです。しかし、企業では製品化するには大きな障壁になってしまいます。そのあたり、学生時代の意識と企業で研究開発する上での大きな違いと言えるでしょう。

そのような中で今、自分の中で一番、気になっていることはなんですか。

L 研究開発者として、新しい素材を追い求めているのですが、消費者の求めるもの、ニーズを満たすものは何なのか。それに応えうる素材をいかに開発するかということです。

バックグラウンドとしてニーズの把握が重要となりますが。その手段はなんですか。

L 食品関連の展示会や、学会などを訪れて、現在、どのような健康食品が求められているのか、あるいはどんな研究がなされているのかなど、そのあたりの情報収集に力を入れていて、それが役に立っています。また、情報への接し方も若干違ってきています。
学生時代は、NMRによる分析の仕方などが興味の中心でしたが、企業にきてからは、新しい成分や素材が見出されたかなど、自分の仕事に役立つような情報を求めるようになってきました。
また当社では、営業との連携が密で、定期的にミーティングが開かれ、「こんな話や要望があった」と言われることがあります。これも、市場や消費者が求めるモノを把握する上で、そこで得られる情報も研究開発の大きな力になっています。


基礎の重要性を再認識
今、仕事をしていて、学生時代にこれをしておけばということはありますか。

L 基礎をしっかりと身につけておくことが大切であると思います。基礎的な部分、例えば実験のやり方などで、ある程度時間もあれば、効率性もさほど要求されることなく、学生時代は卒業できればよいという許容範囲があると思うのですが、就職して、仕事に取り組むようになると、それに費やす時間も含めて企業では許されない。実験のやり方、データの解析の仕方など基礎を固めておけば、企業でも効率的に研究開発を進めることができるでしょう。

現在の仕事でのやりがい、これからの方向性については。

L 素材メーカーである以上、自分達が開発した製品が採用され広く応用されることが目標ですが、営業の方からそれが採用されたよと言われると、研究開発に携わった者として、すごくやりがいを感じたことがあります。
また、来年からは、現在よりも生産現場に近い部署に異動することも決まりました。
これまで、研究開発に4年間在籍していて、生産について十分に考慮していない部分があったなということを実感していました。実験段階からセミコマーシャル段階までは、これまで押さえることができました。しかし、その先のコマーシャル生産については実際に知ることがありませんでした。その意味では、生産するにあたっての課題をも視野に入れた研究開発に取り組む契機にもなるのではないか、自分なりにステップアップできると期待しています。素材開発からその生産と、健康食品創りの多くの部分を学べると思うと、やりがいとともに挑戦できる楽しみもでてきました。

挑戦するということですね。

L これまでやってきて、満足するのかといわれれば、まだまだ足りない部分が多くあります。開発については、それなりにできているとは思いますが、開発されたものが製品として送り出されるまでをしっかりと把握しているとはいえません。未知の部分を開拓することになるので、楽しみです。
自分の方向性に合致していると感じることができるなら、常に新しい知識、新しい仕事に挑戦することは必要だと思います。当社は、植物を活かすため、その成分の開発から抽出、製造まで一貫して行っている企業です。その全部を知るうえでも、新しい仕事ができるのは嬉しいです。

最後に、後輩へのアドバイスがあれば。

L どのような仕事でもそうでしょうが、ここでは、植物の事、その成分の開発や抽出、精製、生産など幅広い知識や経験が必要とされています。開発に従事していても、関連する幅広い分野があります。それらを理解する上で、学生時代から、幅広い知識や視野を持つようにしておくとよいと思います。
 
                                      

【文責:(株)スプラウト 伊藤克人】